木刀剣道

 

 年末から日本武道具さんで竹刀を求めようと思いながら、なかなか池袋まで足が届かないでいる。“常在”の2本の内、1本の一節に割れ目が出たのだ。換わりの竹も切れている。

 ついつい引き伸ばしているのには多少のわけがある。最近、竹刀の代わりに木刀を使う。まあ、まともなのが1本あれば取合えず良いか……とのわけである。

 

 <木刀剣道>は触られたら「斬られた」という<ルール>である。面に一枚、薄いガード板を入れる。小手は特性の<鎖小手>、手首に薄目のサポーターを付ける。それに両肘にプラスティク製ガード。

 膝、脛は無し。ゆえに下半身は狙わないだろうという<同族の善意>を互い信じる。

 

相討ちでも相手より早く打てば良いでなく、相手の木刀を体に触らせないとなると、自然、八双、右上段の構えが多くなった。相手の太刀筋を受けてから打つか、捌いてから打つこととすると、自然、青眼でなくなった。

 

 先週の稽古のとき、初めて右下段の構えを取った。剣先は相手の左膝。この構えはどんな攻撃にも自然体で受けられる……と云う教本的なものがある。

剣先を相手に付けるのでもなく、上段に構え打つ体制をつくることもない。体全体をさらけ出すように、一見、無防備状態である。

 

合気の達人は相手が棒か何か武器を持ってもらった方が良いと云う。それは攻撃がその武器一点に集中するからかえって捌き安いという理である。

この理と同じではないか。間合いに入れば相手は必ず打ち下ろしてくる。それがよく見える。また、これを下から左小手下を切り上げることもできる。

竹刀剣道とはまた違う剣筋が幾つもあることを知る。剣道を竹刀剣道だけで終わらせはいけない。これが実感できる。

この日の稽古後、木刀剣道の相方、鎖帷子剣士と「皇室典範改悪阻止」集会、デモに参加するため日比谷公園へ向った。

共に孫がいる“ご老体”同士が、木刀で殴り合いをしているわけだから、たしかに最近の老人は元気だと、電車車中で笑い合う。

 

 平成十八年 睦月之十七日