第二十五話

平成二十八年 十月七日

 

股立{ももだち}を取る

 

「日本の男には剣道着が一番よく似合う」と三島由紀夫にいわれなくとも、

剣道に勤しむ御仁たちはよく承知のことだろう。

 

時代劇映画などで試合、決闘する折、足さばきの邪魔になる裾をたくしあげる。

袴の左右の、腰の側面にあたる明きの縫止めの所をつまみ上げて腰帯、また袴の帯に下から挟むのだ。

股立{ももだち}を取ると云う。

近藤勇も池田屋に突入するとき股立を取った。

 

足首と脛が少し見える。

[凛]がチラッと透けてけて見える気がするのは拙者だけだろうか。

「日本の男には股立ちが一番よく似合う」と拙者の弁

 

裏店の傘貼り浪人などは市中に出向くとき以外は股立を取っていたろう。

台風のせいで日替わりの二着の野袴が乾いていない。

久しぶりに剣道の五常の袴をはいて、股立を取った。

若い日本の男に、ソレなんですかと問われた。

で、「股立を取る」を一席。

 

日ごろ袴と無縁な御仁、武士の記憶の遺伝子を持つ御仁なら

「いざ!」というとき<心の股立>を取りなされ。